フリーランス言語聴覚士はしっ子の weekly magazine

~北のマチのフリーランス言語聴覚士の医療教育系ブログ~

【臨床実習生へ】失敗学のすすめ

第41回

【失敗学】

失敗から学ぶこと。



赤ちゃんは、
転んでは泣き
歩けるようになるまで転び
転びから学習して歩けるようになる


自転車は
乗れるようになるまで
悪戦苦闘しないと
絶対に乗れるようにならない
体が覚えるまで
ひたすら練習
失敗から学んではじめて
自分のものになる。



子供の頃、あれだけ失敗して
学んできたのに、

どうやら社会人では
失敗は認められにくい模様。

経験したことからし
真に学べないし、

失敗があるから
ほんのちょっとずつ
成功に近づいてゆくのにと、思う。


そろそろ【失敗学】という学問があっても
いいのにな、と思う。


そんな今日は、
【失敗】から得たことがテーマです。



~【臨床実習生へ】失敗学のすすめ~

医療・福祉系の学校は、

卒業までに必ず臨床実習というものがあります。
(保育や製菓、調理など専門学校では、実習は一般的ですね。)


私の卒業した
言語聴覚士の専門学校では、

当時、6週間と7週間の計2回の臨床実習がありました。

通算で3ヶ月と1週間です。

同じリハビリ系でも、
8週間、8週間など職種や学校によって、
期間や回数には、ばらつきがあります。


この臨床実習、
優・良・可・不可の成績がつきます。

毎日のレポート、
サマリー、
次の日の評価準備、
調べ事や質問事項まとめなど、

実習生は毎日忙しく過ごします。

いわば職業訓練のように、
現場で学んでいきます。

この実習時の成績が不可なら
原則的に卒業ができなく、

卒業できないと、
国家試験を受ける権利すらももらえず、
権利がないから、
当然、言語聴覚士にはなれません。


わたしは、これに怯えていました。


もし、実習が通らなかったらどうしよう・・・と。


というか、
先生たちも生徒たちに
プレッシャーをかけていたと思います。


幸い、最終的には
ストレートで卒業、合格、就職は
できました。


が、そこに至るまでには
かなり紆余曲折はありました。


そう、

【失敗学】とは、
私が臨床実習で失敗したことから、
私が得た学びのことです。


  • 私の失敗①

実習2日目に、帰宅後から朝まで寝てしまい、提出物がだせなかった。


臨床実習では、
毎日実習レポートをだすことが
絶対のルールになっています。

それを、書いていくことが出来なかった。

ここから、負の連鎖が始まりました。

  • 私の失敗②

失敗を恐れて、毎日の提出物が書けなくなる。


私の小さな小さなプライド。
「実習前にあんなに準備したのに、いきなり失敗してしまった。もう悪い評価になってしまった。」

今ならいくらでも、挽回できる、と思うところだけど、

当時は一つつまづくと
諦めてしまう甘ちゃんでした。


f:id:hassikko:20180609094209p:plain
(更なる失敗を恐れて動けなくなる)



そうなると、
「またレポートを出せなかったらどうしよう。」と思うと、不安でこわくて、
プレッシャーで書けなくなる。

当時は手書きでレポートを書いていたので、ペンを持つ手に力が入らず、
朝まで止まってしまっていました。

  • 私の失敗③

一回ミスをした→またミスを犯すことがこわくなった→書けない→さらに大きなミス→リスタート不可能

自らやり直し立て直すことができず、
気づいたときには、

「レポートをやってこなくても許される」

と勘違いするようになり、

レポートを出さなくても、
出せなくても、
実習には毎日行かせてもらえてるし、

【私はよく頑張ってるから】許してもらえているのかもしれない、

なんて自分の都合のいいように、
思っていたように思います。

連日1~2時間睡眠が続いていて、
正常な判断が全くできずにいました。


そうこうしているうちに、
担任の先生が実習先に呼ばれました。

  • 私の失敗④

臨床実習では、
学校での学び直しが必要な人、

なんらかの理由で学校で
再教育が必要であり、
臨床実習に来ても意味がないと
判断される場合、

一旦学校に帰されます。


これは、事実上の
戦力外通告です。


私はこれにあいました。

それは、そうですね。
臨床実習生が守らねばならない
法律のようなルールを
守れないのですから。


一旦学校に返されて、
私はラッキー、と思いました。

これで、やっと寝れる。
これで、やっと解放される。

この甘い考えが失敗でした。

学校の先生にはおもいっきり
こころの内がバレていて、

ここから、
取り調べのような毎日が続きました。

実習中、何がいけなかったのか、
自分と嫌でも向き合わなければならない時間をいただきました。

  • 私の失敗⑤

学校で再学習期間2週間が経ち、
もともとの実習先に
戻れることになりました。

でも、私には
再学習期間の2週間は短すぎた。

なにも、こころの整理のつかないまま
また実習が始まり、

再チャレンジだから、
誰もが改善していることを期待するなか、

やっぱり私は
レポートを書くことが出来なかった。

書いても評価されるし、
書かなくても評価される。

生まれてはじめて、
はっきりと、【評価される】場にいて、
怖じ気づいたんですね。

  • 私の失敗⑥

再チャレンジでも、
約束ごとを守れないので、
実習指導者の諦めモードが伝わってくる。

「もうどうにもならない」

私自身もかなりの諦めモードでした。


  • 私の失敗⑦

こんな散々な実習のあと、
現実が待っていました。

同級生たちが、
頑張って頑張ってクリアして、
好評価されているなか、

わたしの実習の成績は不可。

どんな理由でごまかしても、
不可は不可なのです。


そこで私は思いました。


「1年休学したい」


現実から逃げようとするあまり、
休学して、自分が楽になる方法を選ぼうとしたんですね。

本気で親を困らせたことは、
失敗だったな~と思います。



時期がきて、
2回目の別の病院の実習に行って、
「今度こそは」の思いで、
まぁまぁの成績で実習を終了して、


卒業して、
国家試験も合格して、



その時にふと思ったのです。


まだ、実習が上手くいかなかった
気持ちを引きずっている、と。


そして、

北見で言語聴覚士として
働いたら、
めちゃくちゃで迷惑かけた
実習指導の先生達のそばで
働けるのではないか、

このままもやもやした気持ちで
北見を離れたら、
北見のことが嫌いになるのではないか、


どこか他の街に就職したら、
ふるさとのことが嫌いで戻れなくなるのではないか、


そう思ったときに、
北見で働きたい、と思いました。

就職という名の
リベンジです。

「まだやり残したことがある」
そんな気持ちでした。


あのとき、
散々逃げて、あとで後悔したから
もうあの思いはしたくない。

できなかったことは、
できるようになりたい。

たとえ、
やり直しは利かなくても。



そんなことで、
現在まで、言語聴覚士として働いています。

今では、
かつて迷惑をかけ続けた
実習先の担当者の方々とは
いいお付き合いをさせて頂いています。


あのとき、就職の時だけは、
逃げずに向き合ってよかったと
しみじみ思います。


これが、
失敗学からの学びです。


いま現在、
私の短時間働く老健施設には、
二人の実習生が来ています。

今は、当時ほど
実習も厳しくなくなったと聞きますが、

それでも、
実習の渦中にある学生は

悩みがつきないと思います。


大丈夫。
失敗しても、大丈夫。

諦めなければ大丈夫。


臨床実習の失敗談は、
私の財産です。


言語聴覚士を目指す人へ、
今日もまたエールを送ります。