フリーランス言語聴覚士はしっ子の weekly magazine

~北のマチのフリーランス言語聴覚士の医療教育系ブログ~

フリーランス言語聴覚士のこれまでとこれから

【第107回】

フリーランス言語聴覚士のこれまでとこれから


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いつもこのブログに訪問下さり、
ありがとうございます。



2020年も終わりが近づいてきています。


この時期に自然と振り返るのが、

「今年はどんな年だったのか。」



振り返ってもなかなかこんな年はなかった、
と思えるような今年の一年ではありますが、


どうかこの状態が

雲の切れ目から日の光が差し込むように、
霞が晴れるように、穏やかな日々になりますことを
願わずにはいられません。




私は、今年を振り返るにあたり

ふと気づくとフリーランス言語聴覚士になって
5年目に入り、


自分としてももう5年目と
驚きを隠せてはおりませんが、、、



自分なりに歩んできた道があるので、
このあたりで少し振り返りたいと思います。
(過去ブログでも触れてはいるのですが)


フリーランスSTに関するお問合せや
コンサルの申込みなど、ご相談を頂くことも増えているので、


ここにも参考までに記事にしておきます。




フリーランス1年目

2016年、ST8年目、29歳

時期は定かではありませんが、
1年位前からフリーランスを意識し始め

色々と思い悩む時期と重なり、

退職を決めフリーランスの道に。
半年間の退職までの準備期間を設け、

訪問リハビリの移行の関係から

最終的には常勤退職後、すぐに非常勤に切り替わることになり

老健週12時間勤務となる。


非常勤勤務以外の時間はフリーランスとなり、
今振り返ると、セミフリーランスや複業という形式にあてはまると思いますが、

介護予防分野に参画するために、さぁどう仕事をつくっていくか。



仕事の軸として
「嚥下障害予防」「嚥下障害の啓発」のテーマしか決まっていなかったこともあり、

嚥下食に特化した配食事業をはじめるか、(これは配食事業の現在の充実を見ると参入しなくてよかったです)
とろみ剤を地元の食品を使って開発するか、など

何から手をつけるか迷いに迷っていました。


当初の期待としては、
社会的にニーズのある言語聴覚士という専門職が
フリーランスになったら、

そのニーズに合わせてお仕事の依頼が
向こうからやってくると思っていました・・・


現実はそんなに甘くなく、理想と現実のギャップが埋められず

半年間、ST以外にもさまざまな勉強をしながら

頭を少し休ませた時期でした。

後から振り返ると、この時期にした勉強や出会った人、
とった資格など、今、活かされているものばかり。

やはり無駄な時期などないものだな、と思います。



冷却期間のあと、

嚥下障害予防という社会的課題に対するアプローチということで

NPO化を勧められ、

多職種からなる嚥下障害予防を主活動とする任意団体を設立。

その事業として、公民館等を利用した一般高齢者向けの嚥下サロンを月2回開始。

嚥下の仕組みの講義、お食事のご相談、飲み込みやフレイルチェック、
自宅でできる嚥下トレーニングなど実施していました。

言語聴覚士法を確認しながら、
当時ほとんど耳にしていなかったフリーランス言語聴覚士の働き方は

どんな方法なら可能なのか、どこまで出来るのか、

参考にするものなど全くない中、
本当に手探りで進めていきました。

当時は立ち上げた嚥下サロンの利用人数に波があったり、
また、参加費は経費で消化してしまう程度のものであったので、
活動には悩みばかり。

だからといって、自費リハにも踏み切れない。

ある経営者から言われた
フリーランス言語聴覚士のパイオニアになったらいい」の言葉を支えに
進んでいました。

この時に歯を食いしばってまわったのが、行政やケアマネさんの事業所等に営業まわり。

緊張のあまり逃げ出したくなりながらも、
何とか自分を鼓舞して前に前にと進んでいました。



フリーランス2年目


2017年 ST9年目 30歳

少しずつ少しずつ、出逢う人が変わり、

私個人の認知度が高まり、

障害者団体での講演、介護福祉課の高校の授業、

新聞記事での取材など、

お声をかけていただくことが増えていきました。


少しずつ高まっていく、嚥下障害の予防への意識。


その手応えを確かに感じつつ、次のステップに進むことを
思い描くようになりました。


多くの方に参加して頂いた事業の走りとしてスタートした
嚥下サロンは単年度の事業として終了し、

嚥下サロンの発展型として物件を借りて
店舗を持ちたいと夢を描きました。


なにせ、フリーランス言語聴覚士の働き方なんて知らないし、わからない。


こんな言語聴覚士がいたら面白いな、と思う姿を
ひたすらにやっていこう!スタイル。


正解はわからない、だからやってみる。


無鉄砲とも思えますが、


通常だと、病院や介護施設等に所属することが当たり前なSTが
社会で好きに動いてみたら、

どんなおもしろい掛け合わせでお仕事が生み出されるのか、

一種の社会実験のような感覚で


広い意味で嚥下障害の予防ができるような
環境づくり&まちづくりをはじめました。



店舗でやってみる、そのプランは

嚥下障害予防の任意団体が運営する
「地域共生型の嚥下食が食べられるカフェ」


地域の子供たちから、お年寄りの方までにぎわいながら
その真ん中に言語聴覚士がいて、

自然と病気になる前から言語聴覚士に出会える場所をつくりたい。



食品衛生責任者の資格をとり、飲食店営業許可をとり、

家庭のお金は手をつけないことで、夫に新規事業開始の許可をとり

資金調達に選んだのは金融公庫からの貸付とクラウドファンディング



自分を信用、信頼してもらうにはどうしたら良いか、

本を読み、人に相談し、仲間の力を借りて走り抜け

なんとかコンセプトを形にしてオープン。

そのコンセプトのオリジナリティから注目度が高まり、

介護新聞や各種講演会にも度々、お声かけ、取り上げてもらえました。

表向きは普通のカフェなので、

お客様の殆どは通常のカフェ利用のお客様でしたが、

実際に嚥下食の相談に来てくれる人、自身の介護の相談に来られる人、
子どもの発達や構音の相談、

嚥下食の商品開発など、

絶対的な件数は少なくても

確かに必要とされているターゲット層が反応してくれていることを感じました。



非常勤で週12時間勤務と嚥下食が食べられるカフェの経営、営業。

そのほとんどを一人でこなしていたので、
なかなか目の回る忙しさ。

確かな充実感と程よい疲労感。

ただただ走っていました。



フリーランス3年目

2018年 ST10年目 31歳


非常勤の臨床業務とカフェの経営、営業

充実感を感じつつも、STとしてのお仕事は十分にできているのか、
思い悩んでいました。


店に立つと、どうしても
「カフェの人」になってしまう。

言語聴覚士がいる」「嚥下食が食べられる」

そこをコンセプトに強く出しすぎると、来店客層を限定してしまう。

飲食店である限り、来店客数、売上は必須。

今後もどんなスタイルで営業するのか、
考える時期が続きました。


離乳食を販売してママさんたちが元気になれるような
工夫を地域相手にしたり、

嚥下障害予防のカレンダーを制作して販売したり

求められていることに近づこうと工夫の連続の日々でした。


NPOとして法人化するか、その必要性は果たしてどうなのか
そろそろ決断をしなければならない、と思案を重ねつつ

人との出逢いをとにかく楽しんでいた時期でもありました。




フリーランス4年目

2019年 ST11年目 32歳 


そんな中、新たな命を授かっていることが発覚。

長年、そのタイミングを家族で願っていたこと、
悪阻による想像を超えた体調の悪化もあり、

今後の運営の存続を考える機会となりました。


母体を優先とすることで経営を引き継ぐことを決意し、
違うコンセプトのカフェにリニューアルすることになり、


思いがけず歩みがスローになったタイミングの中でも

多職種向けの講演会、地域住人向けの講演会等が

これまでのフリーランスSTとしての活動の種まきがつながっていたり

その活動の重要性を評価していただける機会がつながり、

人前で話す仕事に縁が深いことを再認識しました。



非常勤勤務も正式に退職し、

臨床から一時離れ、完全なフリーランスSTとなったのもこの時期で、

行政の会議、嚥下食食開発など、

出産前までできるお仕事を継続。

COVID-19の影響により
産後もオンライン会議など参加できるお仕事があり、

フリーランスだからこそ、自分のプライベートの状況が変わっても
柔軟に働きやすいことを身をもって感じました。



フリーランス5年目

2020年 ST12年目 33才

夫の半年間の育休でサポートもあり、
産後2カ月より少しずつ仕事開始。


行政の会議へ参加、オンライン嚥下相談、介護施設嚥下相談等、


育児を中心として、言語聴覚士としての仕事も早期から復帰、継続する、

私の中では理想的なスタイルに。


初めての育児のさ中、特に生後3か月くらいまでの母子ともに不安定な時期、

仕事がある、ということが「もともとの自分に戻れる時間」として、
自分らしくいられる貴重な時間でした。

自分らしくいられるから、子育てにもわずかばかりの余裕ができる。

子どもとは笑って過ごしたいからこそ、
言語聴覚士の仕事を通して、自分自身も笑っていたい。


ママになること、STを続けること、

そのどちらも、わがままかもしれないけど諦めたくないし、
その方法を探っていきたい。


不思議なことに、「こんな風に働きたい」としてだした願望は
叶っていることばかりで、

こどもと一緒に働くスタイルを採用して頂けている契約先や、
在宅でオンラインで施設とつなげるスタイルも採用して頂けています。



状況は年々変わっても、自分が理想とする姿はあきらめなくていい、

男性と女性でも、その人のタイプや理想像でも
どんなスタイルにするかは異なりますが、


「こんな言語聴覚士がいてもいい」そんな姿をまず思い描くところから始めることで
形作っていけるのだと思います。


最近では少しずつフリーランスSTの存在と働き方を耳にするようになり、


先駆者の人達からその働き方を教えてもらえるようになってきました。


TwitterなどSNSでは
私も情報集めや面白い活動のST関係者の方々との出逢いを楽しみ、
その活用を重宝していますが、



結局、どんなふうに働きたいか

決めて行動するかは自分次第なんですよね。


フリーランスST」といっても
限りないスタイルがある。


自分にあったスタイルは必ず存在する。



やる前から諦めなくっていい。
それは私自身の体験から会得したことです。




そして、フリーランスST5年目は残り半年。

やりたいことはあげればキリがない程なのですが、

自分の身体は一つ。かけられる時間も限られている。

だからこそ満足いくものに時間とエネルギーをかけていきたい。



年明けに自分としては大きな発表を用意していますが、
それはまた今度の話で、


今は扶養範囲で働くフリーランスママSTとして、
今後も時間とその働く範囲を自在に変化させながら、


もっともっと限りなく
STを面白くする挑戦を続けて

キーワードの「いつでも柔軟に」を変えずに進んでいこうと思います。